仕事はじめ
年末年始休診で、久々にゆっくりと考える時間が取れました。
当院も丸15年が経過し、10年以上拝見させていただいている患者さんが多くいらっしゃいます。
歯科医師にとっては、10年は「長期」症例のイメージです。
そんな患者さんを振り返ってみると、学生時代や開業前後に学んできたこととかなり違うなあという印象があります。
いわゆる「正しい治療」が、必ずしも良い結果を生むとは限らないことは経験的にわかってきました。一方で、「ではどうすべきか?」というのは経験的な直観や暗黙知によるもので、言葉にすることは難しいのです。
しかし、医院の継続性を考えると、この辺りは今後10年で言葉にしていかねばなあと考えています。
若い衛生士を見ていると、真面目で真摯な人ほど「正しいこと」を遂行することが良いことと捉えて一生懸命に臨床に取り組みます。そして、「何が正しいか」を学び続ける。
ただ、それはいつか患者さんから「乖離」していきます。(これがなぜかといえば、「正しいこと」がどのように生み出されたかを考えればなんとなくわかるのですが、この辺りは今後ゆっくりと言葉にしたいです。)ゆえに、「正しさ」から距離を置かなければならない。
しかし、それが難しい。なぜなら、私たちは、「正しさから距離を置く」こと、すなわち「正しいとは言えない判断をする」ための理論的なバックボーンを学んでないからです。
そんなことをぼんやり頭に浮かべて調べ物をしていたら、Patricia Bennerという看護学者にヒットしました。看護系の方であれば有名人だと思いますが、歯科ではほとんど目にすることはなく、お恥ずかしい限りです。彼女は、まさに直観や暗黙知について語っています。
また、その背景に解釈学的現象学なるものがあることを知りました。歯科分野において「正しさ」から距離をとるための理論的バックボーンと、それを臨床で応用できる直観、暗黙知、そして思考力のようなものをスタッフに伝え続けていきたいと思うのです。
今年もよろしくお願いいたします。