通院していただいている患者さんのための 用語集6

最終更新日

ーこちらは通院中の患者さんにお配りしている冊子を転載したものですー

以下の記事の続きになります。

発【さいはつ】

歯科医師としては認めたくないところですが、一旦治ったとしても、再発することはあります。虫歯治療 とは、一般的には、人工材料を医療用の接着剤を使って歯に接着させることです。 それが、熱や水、噛む力にさらされ続けるわけです。イメージとしては、家の外壁が晒されている環境に 似ています。外壁が劣化するのと同じように劣化していくのです。患者さんにセラミックなら劣化しない のではないか?と言われることがありますが、確かにそうです。銀歯や樹脂の材料に比べてとても良いよ うに思えます。ただし、接着剤は劣化しますし、割れることもありえます。

長い おつきあい

不確実性を考え、慎重になればなるほど、下記のような臨床判断が生じます。 ・治療しようかしまいか?→しばらく様子を見よう。
・細菌を取り除き続けよう。 ・再発した時に体へのダメージ、経済的ダメージ、精神的ダメージが最も少ない方法を準備しよう。 これらは、全て、長いおつきあいをしていただけることが前提になっているのです。

上に、「セラミックが銀歯や樹脂に比べると良いように思える」と書きました。しかし、診療中に僕から そのお話をすることはあまりありません。なぜならば、僕らが良さを強調してお勧めした上で、すぐに割 れてしまったら、長いおつきあいをしようと思うでしょうか? 自分が歯科医師として患者さんの健康に 対する責任を果たすために、なにを優先すべきか考えた結果なのです。本当は、お一人お一人にすべて説 明できれば良いのですが、日本の保険制度の中で、現状の医療の質を保つためには、時間が限られること をご了承いただければ幸いです。もし、ご希望の方がいらっしゃれば、優秀な技工士がおりますので、ご 遠慮なくお声がけください。

おわりに
ここまでお読みくださり本当にありがとうございます。この冊子は、思い立って2週間ほどで作り上げました。開業して9年 間、患者さんに伝えたいことを文章にし、次の日に読むと恥ずかしくなり破棄する、その繰り返しを数えきれないほどしてきた のですが、用語集というアイデアが生まれた直後にあっという間に出来上がりました。それほどまでに伝えたいことが積み上がっ ていたのだなあと自分でも驚いています。 このクセのある冊子が患者さんにどう受け取っていただけるか心配ですが、これはもう山麓通り歯科診療所のありのままです ので仕方ないかと思っています。
僕は、歯科医師が「過剰」とわかっていて歯学部に入った世代です。言葉に拘れば、「過剰」と言われていることは、社会に 「もういらない」と突きつけられているのと同義です。そのような環境の中で、声高に自らの必要性を叫んだところで無意味で す。しかし、時代とともに変わる社会の要請を捉え、何をすべきか考えれば考えるほど、やらなければいけないことが山積して いるという気持ちが増しています。
サイエンスとしての医療技術の進化は目まぐるしい。 一方で、それを「どのように扱うか?」という臨床家の進化は十分でしょうか? この冊子は、それに対する挑戦でもあります。
サイエンスとしての医療技術の進歩はわかりやすい。 だから、過信しやすい。扱い方を間違うとまずいのです。
この冊子に書いたことは、わかりづらい。 だから、忘れてしまう。しかし、本質的に極めて重要なことであると確信しています。
医療技術の進化と、臨床家の進化を別のものと考え、これからも精進してまいります。
最後に、この用語集の用語は、当院に限り伝わるものであることを再度強調させてください。

chm06833