-専門家向け- D.Enlow essential facial glowth 第三章 を読む

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成長発育に携わってからというもの、この分野がいかに複雑であるか、そしてそれを理解するためには、科学的な思考だけでは限界があるということを痛感している。

D.Enlowのessential facial glowthを読みながら、どのような思考で複雑性に挑んでいったかを感じていきたい。

非常に難解な本なので、ゆっくりと読みながら自分なりの解釈をまとめて行く。

ー第三章「成長発育の順序」ー

彼は、まず、「部位と段階」に分けて説明するとしている。
これは、すなわち「視野と時間」を切り取って語るという宣言である。

ここが重要なポイントである。

複雑性の高いものを言語化するためには、切り取りが必要である。切り取ることによって分析的に理解することは重要なことではある。一方で、それによって何が失われているか?ということを常に頭においておかねばならない。それを忘れがちなのが、現代の医学のように思えてならない。

enlowは「実際は同時に起きること」としながら、便宜的に「上顎弓、下顎弓、頭蓋骨、その他」に分けて述べている。

そして、均衡について語られる。
様々な部位が物理的に接触しながら、それぞれが形を変えていくのであるから、それが均衡状態にあるのか否かを論じるのは自然なことである。

成長発育とは、「均衡と不均衡」の連続である。
ここで認識すべきことは、「均衡と不均衡」と「正常と異常」は全く別の概念であるということである。
僕らの診断の判断軸は、「正常と異常」であるから、それとは違う視点が存在するということ自体が受け入れづらいかもしれない。

「不均衡であるが、異常ではない」ということもあれば
「均衡は取れているが、正常ではない」ということもあるのである。

そもそも、
ー何が均衡で何が不均衡なのか。ー
ー何が異常で何が正常なのか。ー
答えのない問いである。

成長発育においては、常に不均衡な存在するが、そのほとんどは異常とは言えない。均衡と不均衡の連続こそが成長発育と言えるのであろう。

この「均衡と不均衡」に立ち向かっているのがこの章である。

続く

chm06833