頭蓋顎顔面の成長発育に関して書きたいと思う。 1
僕は、成長発育という言葉がよくわからない。
わからないという前提で、成長発育という洞窟を進む過程の記録のように書いていきたい。
その「わからなさ」に対して思考を巡らせることから始めようと思う。
成長発育という言葉は、英語ではGrowth and Developmentと表される。
D.Enlowは「Growth and Development」に関して、Growthをサイズの変化、Developmentをその構成要素の変化というように、成長と発育を別のものと捉えている。
日本語では、成長と発育を一纏めにしているために、英語に比べボンヤリと表されているとも言える。しかし、成長と発育が別であると言われたところで、成長発育が、「成長と発育」と分けて考えるのだなあと分かっただけであって、「成長とはなんであろう、発育とはなんであろう」と問うてみると、やはりボンヤリとしていることには変わりはない。
ボンヤリしているから、わからないのだろうと考えると、もっとミクロのことから理解しなければいけないと生理学、生化学、あるいは分子生物学を紐解いてみようと思い腰を上げるのである。
そうすると、分子生物学的には、骨は、こういうメカニズムで増大するのだよね。ということがわかり始める。僕は、「よしっ!わかった。」得意顔だ。
しかし、そこで一旦冷静になってみたい。
それは、ボンヤリとしたものを分解して理解可能にしただけの話である。しかし、それは分解したものに対しての理解であって、ボンヤリとしたもの自体の理解とは言えない。
骨の増大のメカニズムを知った先に、分解したものを組み立てて理解するプロセスが必要なのである。
例えば、機械好きの子供がテレビなどを分解してみたという話は割とよく聞く話だ。一方で、分解した上でそれを組み立てて元どおりにしたというのは珍しいかもしれない。
僕は、分解して理解した後組み立てられるだろうか?
例えば、誰かが頬を赤らめたとする。
その「赤さ」とは何なのか。それを「ほんのり赤いよね」とボンヤリ表現したとする。
いやいや、そんなことでは全然理解していないもっと色というものを勉強しなければならないと考え、色について調べてみると、RGBという色の表現にに出会う。
この色は「RGBカラーでいうと(R238 G135 B180)なんだよ」と語ることができるようになる。
もっと勉強を深めると、「いやーダサいね。CMYKを知らないのか?あれは、C0 M60 Y0 K0。」ということを教えてくれる人も現れる。そこで、「いやいやRGBの方がレトロでイケてるでしょ。」みたいな論争になることもあるかもしれない。
そんなこんなで、一段と「赤さ」を理解した気になるのである。
しかし、また立ち止まってみたい。
「ほんのり赤い」というボンヤリとした色合い。そのボンヤリ感には時間も含まれるかもしれない。パーーと赤くなって、その後ゆっくりとおさまった感じなのか、それとも、ジワジワジワジワ赤くなったのか。その背景に何があったかに想像をはわせたくなるような広がりが出てくるのである。
それは、ボンヤリの得意技であり、RGB vs CMYK論争とは、全く違った深みを残す。
話がそれることを認識しつつ述べれば、
「ほんのり赤い」と捉えることがケア的感覚であり、「RGB vs CMYK」のような思考はキュア的(科学的)思考であると言えなくもない。
その前提にたてば、臨床においてこの二分のバランスをどう取るかという永遠のテーマとなる。