考えていること

 
 人生で最も大切な時期。皆さんはどのようにお考えでしょうか。
 私は、今と亡くなる直前と考えています。もちろん今を満足できていなければ、人生を楽しめません。
亡くなる直前はどうでしょうか。常にこの時を意識している方は少ないかもしれませんが、私はこの時期を人生で唯一やり直しがきかない大切な時期と捉えられます。    
 当院としては、この時に最期まで健康で、生活を楽しめて良い人生だったと思って頂けることに価値を見いだしたいのです。
 そして、歯科医療は、口腔の健康を回復、維持するために存在します。これは、当然のことながら、私たちが決めたことではなく社会から与えられた役割です。

  虫歯を治す、歯周病を治す、入れ歯を作る、インプラントを入れる、矯正をするなどは、手段に過ぎません。
その価値観と社会的使命に基づいて診療してますから、今満足して頂くのは当たり前で、今さえ良ければよい訳ではなく、患者さんの将来に責任をもつこと、つまり『生涯にわたる口腔の健康を提供すること』が私たちの存在意義になっています。
『生涯に渡る』
この一言が、非常に重要です。この言葉の重みを感じながら臨床に取り組 んでいます。
この存在意義を、単なる努力目標とするのではなく、どのように実現 していくのか?を考え抜き実行していかねばなりません。 
そして、乗り越えなければいけない壁と、拠り所となる可能性が見えてくるのです。
 

乗り越えなければいけない壁 
 歯科治療の限界について

 
 歯科治療は完全に元の状態に戻すものではありません。言い換えれば、 治療後も、常に再発のリスクを秘めていると言えます。 例えば被せ物の中が虫歯になるということを、多くの方が経験されていると思います。これは、歯にセメントで付けられた人工材料が毎日のように噛む力や熱にさらされているのですから、当然起こりうることです。家の外壁が劣化するのと同じです。これが、私たちが向き合っていかなければいけない歯科治療の本質の一つでもあります。 
 
しかし、近年の医療技術の発達によって、新しい技術への過信が生まれ、本質を直視しない傾向が強くなってきている気がしています。さらに、歯科医院過剰による競争の激化がそれに拍車をかけているかもしれません。
 どんな神の手を持つ先生が治療したとしても、どんな最新の医療技術を適応しても、患者さんの長い人生のうちに問題が起きることが多々あります。 これは、ほぼすべてのの歯科医師が認識していることだと思います。
にもかかわらず、医療広告だけ見ていると、そんなことは全く伝わってきません。素晴らしいものだらけです。
このことは、現在の歯科医療の大きな問題点の一つだと捉えています。
 
そして、平均寿命の伸びを考えると『人生が長い→問題起きる可能性が高くなる』と考えられます。 

その限界を認識しながらも、『生涯にわたる口腔の健康』を提供出来なければ、私たちが存在する意味がありません。  
このことに向き合った時、私たちは、従来型の歯科医院の形態から進化 していかなければならないことに気がつきます。 
私はまず、患者さんと歯科医療は不確実性を伴うという認識を共有すること、そして、その中で私たちがどのように『生涯にわたる口腔の健康を提供していくか』という方針を明確にし、患者さんの同意を得ることが、治療をさせて頂く大前提であろうと考えます。 

この考えは、患者さんに伝わりづらいことは承知してますが、これこそが今の歯科医療に足りないことであり、超高齢社会を迎え私たち若い世代が真剣に考えていかなければならない課題であると強く思うのです。 

拠り所となる可能性
『虫歯と歯周病=原因そのものを取り除くことができる病気』

 
 歯を失う原因の多くを占めるのは虫歯と歯周病です。
その病気の原因は、細菌です。

細菌が原因であるがゆえに、細菌さえコントロールすれば予防、あるいは進行を止めることができるのです。
 歯科治療の限界に向き合ったとき、このことに可能性を見いだすことは自然なことです。
 
しかし、それだけでは足りません。
 治療すると再発する可能性があるから、予防しましょうというのは全くその通りです。ただし、患者さんの多様性に目を配れば、それが全ての方に当てはまるとは限らないことを認識しなければなりません。

そこで、私たちは、様々な視点から論理的に思考を重ね、6つの指針にたどり着きました。